第二章 第五話 呼び寄せる者

山王機関本部さんのうきかんほんぶ

帆村ほむら魯公ろこう
このところ、人生よろづ相談という
相談所に出かけたまま姿をくらます、
そういう市民が増えているみたいだ。
相談所、市内に四カ所あるようだが、
一体誰が主催しておるのか、
皆目かいもくわからん。
ここは成り行きを観察するしかない。
風魔ふうまよ、巡視パトロールの時には、噂話にも留意してくれよ。
喪神もがみ梨央りお
失礼致します。
セルパン堂の周防すおう彩女あやめさんが
ロビーにいらっしゃっています。
上でお会いになりますか?
鈴代すずよさんもご一緒です。
なんでも、セルパン堂からここまで、
彩女さんを護ってらしたとか。
帆村ほむら魯公ろこう
護る? そりゃ大事だ!
またぞろ怪人を招いたか?
――例の女店員だな、周防すおう彩女あやめとは。
わしも会ってみたかったところだ。
おそらく式部しきべ氏の使いだろう。
通してあげなさい。
喪神もがみ梨央りお
承知しました!

帆村ほむら魯公ろこう
ようこそだ、周防さん。
周防すおう彩女あやめ
まあ、ここが秘密基地ですの!!
彩女はワクワクしてしまいますわ。
如月きさらぎ鈴代すずよ
ごきげんよう、皆さん。
帆村ほむら魯公ろこう
鈴代女史じょしも……
周防さんとご同行とのこと、
何やらありましたかな?
如月きさらぎ鈴代すずよ
先日、彩女さんが怪人に
しつこく付きまとわれ難儀なんぎしたのです。
帆村ほむら魯公ろこう
ふむ、そうらしいの。
それで、今日のところは?
周防すおう彩女あやめ
今日も怪しい人、二人ほど……
彩女はやはり怪人に好かれやすい、
そうなんですわ、きっと!
如月きさらぎ鈴代すずよ
特に瘴気しょうきのようなものは
感じませんでしたが……
様子のおかしな人たちでしたわ。
帆村ほむら魯公ろこう
うむ……貴女の怪人の引き寄せ、
まことに興味深いですな。
一体、何がそうさせるのか――
それで、そこまでして
おいでになったには、
わけがおありでしょう。
周防すおう彩女あやめ
はい、式部店長の
お使いで参りました!
とてもとても大事なお使いで!
店長は彩女を信頼してくださって
こんな重要な使命を
お命じになったのですわ!
帆村ほむら魯公ろこう
う、うむ。それはご苦労だったね。
喪神もがみ梨央りお
それで、式部さんからの
要件というのは?
帆村ほむら魯公ろこう
おお、そうだった。
それで式部氏は何と?
周防すおう彩女あやめ
はい、これをお渡しするようにと……
彩女は手にしていたマニラ封筒から、
新聞の切り抜きを取り出した。
帆村ほむら魯公ろこう
ほうほう、
興亜日報こうあにっぽうの特報記事ですな――
――女怪人、戸山とやまに現る――
なるほど……怪しい光を放ち――
――撃てども撃てども倒せずと……
何でまた、あんなところに……
怪人に弾は効かんしな。
周防すおう彩女あやめ
強いんですね怪人って。
ちょっと素敵。
帆村ほむら魯公ろこう
女怪人というのもよくわからんが、
騒ぎが大きくなる前に手を打たねば。
それで……この記事はいつのだ?
――ほう、四日前か。
一週間ぶりとあるから、次を待つか。
せっかく妙齢みょうれいのご婦人方がお見えだ。
当本部を案内して進ぜよう。
風魔、頼んだぞ。

山王機関さんのうきかん課〕

銀河ぎんがゼットー】
なんてこった喪神もがみ風魔ふうま
ボクの研究室にこんな生きのいい
被験体を提供してくれるなんて!
周防すおう彩女あやめ
あ、彩女あやめは被験体では
ありませんことよ!
如月きさらぎ鈴代すずよ
お仕事中すみません。
少し見学させていただいて
おりますの。
銀河ぎんがゼットー】
ハハハ、ノリが悪いじゃないかっ!
ボクだって冗談ぐらいは言うんだぜ。
しかし、帆村ほむらさんはこんな機密を
一般人にいいのかね?
如月きさらぎ鈴代すずよ
帆村先生が、案内をと――
風魔さんに。
帆村先生は、
私が東雲しののめ流宗家当主だからと、
お気遣いくださったのかと……
銀河ぎんがゼットー】
何だって?
では貴方が東雲しののめ流の宗家当主、
如月きさらぎ鈴代すずよさんというわけか!!
よしきた、準備はいいな、勿論もちろんだ!
にまつわるあらゆる事象、
つまびらかにして見せようではないか!!
如月きさらぎ鈴代すずよ
あの……じゃあ、お願いします。
周防すおう彩女あやめ
彩女、楽しみです。
銀河ぎんがゼットーはいつにも増して
絶好調で、施設の説明を始めた……
銀河ぎんがゼットー】
このボク、銀河ゼットーが
全身全霊をけて研究するのは
異世界のエネルギーであ~る。
アラヤ界から湧出ゆうしゅつするセヒラは、
誰彼だれかれと無くその思念を実体化さす!
ただし実体と言っても、実存はせず、
ある特定条件下においてのみ
存在が許されている。
その一つがであり、は、
審神者さにわ、召喚師、怪人によって、
ようやく、その実態が掌握しょうあくされ、
まるで飼い馴らした家畜のように、
容易に扱えるようになる。
そして! もう一つ、実体化するのは

銀河ゼットーの解説に、意外と鈴代も彩女も、神妙しんみょうな顔をして聞いている。
…………………そして
長いゼットーの話が終わった。

銀河ぎんがゼットー】
以上、はなはだ簡単ではあるが
当研究所の研究の紹介である。
如月きさらぎ鈴代すずよ
東雲しののめ流とはまた違い、
とても興味深いお話でしたわ。
銀河ぎんがゼットー】
そう、まさに現代の帰神きしん法なのだよ!
帆村ほむら魯公ろこう
さてさて、ゼットー博士、
研究所の案内は済んだかな?
如月きさらぎ鈴代すずよ
帆村先生――
ありがとうございました。
とても有意義な時間でしたわ。
周防すおう彩女あやめ
彩女も、とても楽しめましたわ。
帆村ほむら魯公ろこう
それは良かった。
しかしここで見聞きしたことは
他言無用たごんむようですぞ。
周防すおう彩女あやめ
当然ですわ!
もし彩女が話しても、
信じる人なんていませんわ――
如月きさらぎ鈴代すずよ
そうかしら?
彩女さんの話、結構、面白くってよ。
帆村ほむら魯公ろこう
さて風魔、戸山とやま鎮定ちんていまで間がある。
ちょっと試してみたいことがある。
周防すおうさん、少々お願いがあるのだが、
ちょっと実験に付き合っては
くださらんか?
周防すおう彩女あやめ
こんなに良くして頂いたのです。
何なりとおっしゃってください。
帆村ほむら魯公ろこう
それは助かります。
いやなに、少し赤坂あかさかをぶらぶらして
もらえればいいのです。
周防すおう彩女あやめ
はい、そんなことでよろしければ。
だけど……どうして?
如月きさらぎ鈴代すずよ
……もしかして怪人に
狙われる体質を?
帆村ほむら魯公ろこう
おとりにするようで気が引けるが
風魔が付いている。
そこは安心してくれ給え。
如月きさらぎ鈴代すずよ
彩女さん、よろしいんですか?
周防すおう彩女あやめ
構いませんわ!
それにちょっとドキドキもします!

日枝神社前ひえじんじゃまえ

【着信 喪神もがみ梨央りお
早速です、怪人の反応があります。
日枝ひえ神社です、警戒してください。
周防すおう彩女あやめ
いやだわ……あの人。
さっきからじっと彩女あやめ
見てる気が……
如月きさらぎ鈴代すずよ
確かにこちらを見てますわね。
でも、怪しむべきものなのかどうか、
まだよく判りませんわ……

【見つめる男】
あっ、失礼しました。
いや、死んだ姉に生き写しなもので。
つい見とれてしまいました。
――緑の洋服の方ですよ。
貴女は、本当に……
いやぁ、驚きです。
改めて拝見するに、
やはり別人とは思えません。

周防すおう彩女あやめ
怪人じゃなかったのですね。
なんだ、つまらないですわ。
でも、彩女あやめは罪な女なのですね。
困ってしまいますわ。
如月きさらぎ鈴代すずよ
彩女さん、私はホッとしましたよ。
周防すおう彩女あやめ
鈴代すずよさん、ほら!
あすこのおじさん、見てますわ!
きっとそうですわ!
あの芸者さんも!
それからそこの男の人も!
如月きさらぎ鈴代すずよ
まぁ、本当だったら大変よ!

【見つめる青年】
冬美ふゆみさん……
ではないですか?
――ご一緒の方……
大井町おおいまち八高女はちこうじょ冬美ふゆみさん。
はい、尋常じんじょうの時の同級です。
僕は今でも手紙の返事を待つんです。

【見つめるおじさん】
こんなところにいましたか!
――あははははは!
やっと見つけた! 今日は旗日はたびだ!

【見つめるおじさん】
小石川こいしかわ駒子こまこさん!
そんななりしても無駄ですよ!
貴女だとすっかりわかっています。
私ね、市中いずり回り探しました。
浅草あさくさ銀座ぎんざ新宿しんじゅく勿論もちろんのこと、
目黒めぐろ本所ほんじょくまなく探しました。
【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし、セヒラ確認しました。
怪人の恐れがあります。

【見つめるおじさん】
さぁ、私の家へ参りましょう!
貴女に特段のことして差し上げます。
きっと貴女も喜ぶはずです!!

《バトル》

周防すおう彩女あやめ
今の人は……
――怪人だったのですね!
如月きさらぎ鈴代すずよ
ええ、怪人でしたわ。
周防すおう彩女あやめ
すごいです!
喪神もがみさん、怪人をまたたく間に倒した!
彩女あやめ、何だか誇らしいです!

【見つめる青年】
僕は思うんです、冬美ふゆみさん、
貴女は返事を出したんです。
でも郵便夫が横着おうちゃくして届かなかった。
だから僕、郵便夫をりました。
手紙、来ないのは至極しごく当然なのです。
冬美ふゆみさんからじかに……お願いします!

周防すおう彩女あやめ
どうですの?
やはり怪人でした?
如月きさらぎ鈴代すずよ
いえ……
何というか……
――むしろ警察を呼んだほうが……
周防すおう彩女あやめ
まぁ、大変!
でも怪人じゃないのですね。

【悩ましげな芸者】
まめてるねえさん、私の事、
陰で悪く言うようになって……
私、恩をあだで返す性悪しょうわるだなんて、
そんな風にお客さんにも伝わり――
ですから、私、相談所に行きました。
人生よろづ相談です――
新宿しんじゅくまで足を伸ばしたんです。
今、帰りました。私、性悪しょうわるですか?

《バトル》

【正気づいた芸者】
私、何かしましたか?
――ここで約束があったような……
あら、日取りを間違えましたか。
今日はお座敷がかかっています。
もう用意しないと――
もしや、今日のお客さんですか?
違いますよね、今日のお座敷は、
みすじ通のきんでしたわ。

周防すおう彩女あやめ
怪人でしたね、見ましたわ!
如月きさらぎ鈴代すずよ
ええ……
相談所の帰りだとか。
周防すおう彩女あやめ
悩みが深いと、
怪人になるのでしょうか?
【着信 帆村ほむら魯公ろこう
風魔ふうま、もういいぞ。
いろいろわかったからな!
お二人をお送りしてくれ。
周防すおうさん、今日は有難ありがとう。
今度ホテルのランチをおごりましょう。
周防すおう彩女あやめ
まあ、それは嬉しいですわ。
楽しみにしております。