第三章 第十一話 金神の出現

はらえの・帝都〕

神子柴みこしばの洗脳により、よみがえりをもくして、自死じしする者が相次あいつぎ、その者らの思念が、神子柴みこしばに更なる力を与えた。力を得た神子柴みこしば錬金術れんきんじゅつ理論ロジックを用いて、金神こんじんを生み出そうとしていた。
帝都満洲にそれが現れたのだろうか?

〔上野黒河コクガ・南〕

上野うえの黒河コクガでは、酷寒こっかん様相ようそうを見せていた。すべてがてつき、色を失いつつあった。

【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
上野うえの黒河コクガの様子はどうですか?
上野うえの黒河コクガ方面ですが、
セヒラの値、大きく変動しています。
用心してください。
上野うえの黒河コクガのどこかで、
セヒラが凝固ぎょうこしているようです。
周りのセヒラを吸っています!

【聖直階ちょっかいフィリポ】
――あなたを、感じます……
ここが終末の場なのですか?
私はどうしましょう……
どうにもなりそうにもありません……

【聖権正階ごんせいかいアンデレ】
諸君!
いよいよもってよみがえりの時だ。
――ん、あんた、誰だ?
こんなところに、よくいられるな!
それとも、一足ひとあし先によみがえったのか?

【聖明階めいかいペトロ】
き、貴様は!
歩一ほいち寄生きせいする山王さんのう機関の者だな!
わかるぞ、こんなになってもな!
俺達のよみがりを邪魔しに来たのか?
――フフフフ……
俺は歩兵少尉から聖明階めいかいになった!
殉教者じゅんきょうしゃペトロの名も頂いた!
あと少しでよみがえりだ、
お前にはいなくなってもらうぞ!!

《バトル》

【聖明階めいかいペトロ】
……体が消え、ついに念まで……
消えてしまうのか……

【聖直階ちょっかいマタイ】
さっき法科の山下がいたな。
いや、いたのは山下の念だが……
あいつ、人生よろづ相談に出かけて、
そのまま行方不明になったんだ……
あいつが行ったのは新宿しんじゅくの相談所さ。
それなのに――
なんで、こんなところにいるんだ?

【聖浄階じょうかいヨハネ】
黒化ニグレドするだけではダメだ。
神子柴みこしば様の真意をめばわかること。
なるべくその先の段階へ進むこと、
そうして私は黄化キトリニタスを終えたのだ。
いよいよ金の生まれるとき――
金神こんじんのご降臨こうりんのとき――
合一ごういつできるかどうか、わからない。
だが試す価値はある――
阻止そしすることなど、誰にもできない!

《バトル》

【聖浄階じょうかいヨハネ】
いよいよ赤化ルベドを迎えるこの私を、
たおしたつもりでいるのか?
私が金神こんじんとなるかも知れぬのに!

〔上野黒河コクガ・南西〕

不忍池しのばずのいけおぼしき池はこおりついている。
宙に浮く金色の輝く光と、それに向き合う神子柴みこしばがいた――

神子柴みこしばはつゑ】
金神こんじんは現れました――
まさに錬金れんきんすべにより、
また多くに思念を集めて――
しかし私は合一ごういつできませんでした。
金神こんじんから退しりぞけられたのです。
わらってください、みじめなざまを。
早すぎたのでしょうか――
あるいは遅すぎたのでしょうか――
金神こんじん合一ごういつではなく、
私の念を求めているのです。
――私は……吸われてしまいます……
もう、持ちそうにありません……
なぜ、このようなことに……
私の念が……あああ……吸われる……

そこに在るもの――
錬金れんきんのすべをくし、現れし存在――
幾多いくたの思念をつむぎ、生まれし存在――
金神こんじん――
すべてを破壊する兇神まがつかみ――
だが、神と呼ぶにはあまりにも拙劣せつれつであり、いまだ無数の邪心のたぎ根塊こんかいでしかない。
あらゆる念がり固まり、形をした。
恐怖、憎しみ、あるいは死への憧憬しょうけい――
強い念も弱い念も一つに合わさり、今、霊異りょういを現さんとしていた――

《バトル》

金神こんじん
脱血缶だっけつかん一杯に……親兄弟をさつし……
……聖明階めいかいになった……
あああ……吸われる……

金神こんじんは消えた――
思念を吸い寄せる引力はなくなった。

【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
帝都満洲でセヒラの凝固ぎょうこは、
きれいになくなりました。
【着信 帆村ほむら魯公ろこう
梨央りおが言うには、帝都からも、
セヒラが吸われていたそうだ。
――もう終わったんだな?
【着信 喪神もがみ梨央りお
はい……
でも怪人現象はむしろ増えています。
どうしてでしょうか?
【着信 帆村ほむら虹人こうじん
僕が思うに……
人間の心のうちにある怒りや憎しみ、
そういった感情まで引っ張られて、
表に出たんじゃないか?
平生へいぜいは抑えていた感情だ、
それが表に出た――
【着信 喪神もがみ梨央りお
では、怪人ではないのですね、
今、寄せられている報告は。
【着信 帆村ほむら虹人こうじん
ああ、ただ兇暴きょうぼうになっているだけだ。
でも、放っておくとセヒラに触れ、
怪人化するおそれがある。
【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
本部へ帰還してください。

山王機関本部さんのうきかんほんぶ

喪神もがみ梨央りお
兄さん、お疲れ様でした。
虹人こうじんさんも!
帆村ほむら魯公ろこう
皆、よくやってくれたな。
九頭くず幸則ゆきのり
聖日せいじつの本社には、
とうとう特高が入ったらしい。
周防すおう彩女あやめ
彩女あやめ、やはりと思ってしまいます。
強く強く感じていましたから!
新山眞にいやままこと
大元おおもとけても、
まだ信者はいるでしょうね。
銀河ぎんがゼットー】
ところでだよ、金神こんじんの標本なり、
何か持ち帰ったかね!
帆村ほむら虹人こうじん
あれは思念のかたまり、まるで自分の重さでつぶれていくようなもの――
そうではないですか?
帆村ほむら魯公ろこう
しかし神子柴みこしば、あれは一体何者だ?
怪人などではないな、あれは。
思念が人格化したような存在か――
周防すおう彩女あやめ
思念が人格化……
だから彩女も強く感じられたのかも
知れませんわ!
帆村ほむら魯公ろこう
かも知れないな……
新山眞にいやままこと
一定量を超す思念が集まると、
凝固ぎょうこしたり、何か別な動きを見せる、
そういうことがわかりました。
帆村ほむら魯公ろこう
アストラルの様子をさぐると、
思念のことも見えるような気がする。
今日のところはゆっくりしてくれ。
みんな、これで解散だ!