黒札 第四話 牛頭会の狙い

山王さんのうホテルまえ

九頭くず幸則ゆきのり
おい! 風魔ふうま! 風魔ふうま
聞いたか?
喪神もがみ梨央りお
どうしたんですか?
騒々しいですよ!
九頭くず幸則ゆきのり
あっ、梨央りおちゃん!
アーネンエルベが本格的に
召喚を始めたらしいぜ!
喪神もがみ梨央りお
ゴエティアの書を狙ったりとか、
いろいろ動いていましたから――
九頭くず幸則ゆきのり
そういえば鬼龍きりゅうのやつも
独逸ドイツ仕込みの召喚師……
鈴代すずよ東雲しののめ流を閉じると知った途端
不意に独逸ドイツへ行きやがった――
審神者さにわから召喚師って、どうなんだ?
喪神もがみ梨央りお
どうって?
――べるのは同じですが、
私には召喚の奥義おうぎなどわかりません。
九頭くず幸則ゆきのり
山王さんのう機関が向き合うのは、
アーネンエルベと第三連隊……
どちらも独逸ドイツ流の召喚師だ。
喪神もがみ梨央りお
ですね。
まるで三巴みつどもえの様相です。
九頭くず幸則ゆきのり
上手いこと言うね!
そうだよ! 
帝都を巡る三巴みつどもえの攻防だ!
この三勢力が我らが帝都で
合戦を繰り広げるんだ!
喪神もがみ梨央りお
もうひとつ、あるんです
――勢力が。
九頭くず幸則ゆきのり
何だ、そいつは?
喪神もがみ梨央りお
牛頭会ごずかい――
東雲しののめ流をあきらめずに再興さいこうしようと……
九頭くず幸則ゆきのり
東雲しののめ……
そういや鈴代すずよはどうした?
姿を見ないが……
喪神もがみ梨央りお
鈴代すずよさんなら調べたいことがあると、
セルパン堂に向かいました。
四谷よつや区にある古本屋さんです。
九頭くず幸則ゆきのり
そういや青山の方で騒ぎがあった。
気になる、ちょっと様子を見てきて
くれないか、風魔ふうま

青山街路あおやまがいろ

赤坂見附から西へ伸びる青山通りは、陸軍大学をようし陸軍通りとも呼ばれている。
人影まばらなさびしい通りである。

饅頭まんじゅう屋の主人】
あっしはね、
溜池ためいけ通りの方から来たんですけどね、
赤坂界隈かいわいは怪人のメッカだなんて……
そんな言われ方してますね。

【良家の令嬢れいじょう
あら! びっくりだわ!
気安く話しかけないでくださいな――
帝都は怪人情報で持ちきりですよ!
中には怪人にあこがれる者まで……
――けどね、私も二枚目の怪人なら
付いていっちゃうかもですわ!
【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
その周辺は、帝都に六基ろっきある
セヒラ探信儀の谷間なんです!
山王さんのう機関では
セヒラ濃度を測ることができません。
携行セヒラ探信儀を使ってください!

【除隊兵】
残兵戦ざんぺいせんの、花と散れ~♪
ってな!

《バトル》

【除隊兵】
うううう……
まだまだ抜けないぜ!
俺みたいな人間にゃ、
が深く刺さってるんだ!
牛頭会ごずかい、万歳! 万歳!

【女給】
アタシはカフェーの女給なんかじゃ
ないのよ! まったく違うの!
もっとすごいのよ!

《バトル》

【着信 喪神もがみ梨央りお
気を付けてください、黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
その怪人は気が立っています!
つねより強くなっている恐れがあります!

【女給】
残念ね……
あんたは本当のアタシを知らない……
山郷やまごう武揚ぶよう
大丈夫か? 風魔ふうま君!
いやぁ、危ないところだったな!
それにしても……
君の帆村ほむら帰神きしん法は新しい境地に
達しつつあるようだね!
私も実に心強いよ!
ところで、鈴代は出かけたのかね?
帝都では方々で事変が起きている!
無事に連れ戻せるように、
手分けして探そうではないか!
【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
鈴代すずよさんから電話がありました。
式部しきべさんに止められて、
まだセルパン堂にいるそうです。
セルパン堂まで移動してください!

市ヶ谷見附いちがやみつけ近辺で騒ぎがあると聞き、急ぎ、公務電車を市ヶ谷見附へやる。

【着信 喪神もがみ梨央りお
ちょっと寄り道になるけど……
そのあたりで怪人が出たそうです。
異変を感じたらすぐ行動を
起こしてください!

【洋行帰りの女】
洋行帰りのわたくし
ぬか漬けなんぞしょくさせるとは
何事ざますかっ!

《バトル》

【洋行帰りの女】
あはははは、
今度会ったら、あんたもステュウシチュー
具にしてやるからね!
【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
その辺りのセヒラはなくなりました。
セルパン堂へ向かってください!

〔セルパンどう

如月きさらぎ鈴代すずよ
風魔ふうまさん!
さっき梨央りおちゃんに電話したんです。
迎えが来るまでは店にいるって。
式部しきべじょう
鈴代すずよさんはね、
山郷やまごう武揚ぶようのことを聞きに来たんです。
山郷やまごうはこの店に二度ほど来ている……
それも魔導書まどうしょのような古書こしょ
探していました。
如月きさらぎ鈴代すずよ
では……
やはり叔父おじが……
式部しきべじょう
彼が東雲しののめ流再興に執着しゅうちゃくしているのは
間違いないでしょう――
そのきっかけとなったのが……
ゴエティアの偽典ぎてんです。
書にはユダヤ王が地獄に追いやった
神々のことが書かれています。
如月きさらぎ鈴代すずよ
どうやら叔父おじはアメリカにある
ユダヤ人結社にも働きかけて
いるようです――
式部しきべじょう
ただ、易々やすやすと情報は出さない――
相手も一筋縄ひとすじなわではいきません。
なにせ、連中は用心深いですから。
如月きさらぎ鈴代すずよ
叔父おじ執念しゅうねん深い性格です――
式部しきべじょう
うむ……
山郷やまごうの計略でいろいろと
動き始めている――
そうも考えられますね。
やがて大勢力になるための
基盤を整えつつあるのかも――
如月きさらぎ鈴代すずよ
風魔ふうまさん……
叔父のこと、ここで何かわかるはず、
そう考えると家にも居れず――
そろそろ戻りましょう。
式部しきべさん、
いろいろ教えていただき、
ありがとうございました。
式部しきべじょう
いいえ、どういたしまして!
また、お顔見せてください!

流派を再興さいこうしうるすべを求める山郷やまごう
その計略が帝都の怪を呼ぶのだとすれば――
帝都の初夏は風雲急ふううんきゅうを告げつつあった。