黒札 第七話 山郷武揚の目論見

山王機関本部さんのうきかんほんぶ

喪神もがみ梨央りお
兄さん!
鈴代すずよさんがお出かけされます。
帝都の状況はかんばしくありません……
鈴代すずよさんを尾行してください。
危険な目にわないとは限りません!

溜池ためいけ通〕

如月きさらぎ鈴代すずよは、誰かに呼び出されたようだ。
急ぎ足で溜池ためいけの電停方面へと向かっている。

【帝大生】
悪い気に当てられて、
怪人になっちまう奴がいっぱいだ!
うちの寮生りょうせいにも一人いるんだ!
この間なんざ、
混凝コンクリートの壁に拳で穴を開けたんだ!
【着信 喪神もがみ梨央りお
鈴代すずよさん、溜池ためいけから市電に乗ります。
三系統でしょうか……
公務電車を回します!

赤羽橋あかばねばし

鈴代すずよの乗る市電を付けて赤羽橋あかばねばしへ。
鈴代すずよ赤羽橋あかばねばしで四系統に乗り換えるようだ。

置屋おきや女将おかみ
あらいやだ、さっきの女性ひと
すっかり素敵すてきなモガさんね!
見とれちゃったのよ……

兵卒へいそつの男】
あんたも、ク号に興味あるってか?
あーん?
知らないってか!
見逸みそれしたな!
クは怪人クヮイジンのクだよ、
怪人兵士のことだ!
軍も大いに興味を持ち始めたってよ!
【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
急激きゅうげきなセヒラの上昇を観測しました!
注意してください!

【陸軍少尉】
われ大君おおきみされたる者!
おお八洲やしま大義たいぎにかけて、
貴様をち取る!

《バトル》

【陸軍少尉】
うううう……
この俺でもを指揮できる……
そのはずだったのに……
ちくしょう!
――お前は、もしや……
軍の者なのか?
【着信 喪神もがみ梨央りお
その辺りのセヒラはなくなりました。
――黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし……
清正公せいしょうこう前の近くでセヒラ観測です……
鈴代すずよさんは市電四系統です。
ちょうど清正公せいしょうこう前にいるはずです。

清正公前せいしょうこうまえ

如月きさらぎ鈴代すずよ
あっ!
風魔ふうまさん!
帝都が危険なことは承知しています。
でも……
――叔父おじに呼び出されたのです。
折り入って話したいことがあると……
――叔父おじ様……
山郷やまごう武揚ぶよう
鈴代すずよ……
それに風魔ふうま君も!
それなら、話が早いというものだ。
――いやね、小森こもりの不始末を
ここでびようと思ってね!
如月きさらぎ鈴代すずよ
小森こもり
――それじゃ……
この一連の騒動そうどうは……
山郷やまごう武揚ぶよう
なんだ、その目は?
――ああ、そうだよ、
私が小森こもりに指示を出したんだ。
如月きさらぎ鈴代すずよ
叔父おじ様!
――
山郷やまごう武揚ぶよう
鈴代すずよ、お前は知っているだろう。
私はお前のお父さんとは異母いぼ兄弟……
私は父、松丘しょうきゅうめかけに産ませた子だ――
――まぁ、長話はよしておこう。
私には、鈴代すずよ――
お前のような能力は備わっていない。
如月きさらぎ鈴代すずよ
私も……審神者さにわとしては、
まったく至らぬ存在でした……
それで……東雲しののめ流を閉じたのです。
山郷やまごう武揚ぶよう
ふん……ずいぶんと身勝手な理屈だ。
お前が東雲しののめ流を閉じなければ、
私も、もっと研鑽けんさんを積めたのだ!
東雲しののめ流から暖簾のれんを分けた帆村ほむら流が
今や陸軍に協力しているというのに、
我々はまるで浪人ろうにん風情ふぜいだ――
如月きさらぎ鈴代すずよ
叔父おじ様は……
ただ力を求めておられるだけでは――
山郷やまごう武揚ぶよう
力!
いろんな力があるものだな!
――審神者さにわには強い霊力れいりょくが必要だ。
鈴代すずよ、お前が自らの霊力れいりょくふうじ、
我々に神なる力が届かなくなった……
――やがて力は自らに宿る……
それが東雲しののめ流の教えではなかったか?
この私にも宿やどるのだと――
如月きさらぎ鈴代すずよ
――私にはもっと禍々まがまがしい力に
思えてなりません……
山郷やまごう武揚ぶよう
はははは、力は力だ。
だが、もうよい。
まじないめいたことはおしまいだ。
迷信めいしんは弱者の宗教とも言う。
そうだろう、鈴代すずよ――
科学の力によって、
未来が開けようとしているのだ。
――輝かしい未来がな!
如月きさらぎ鈴代すずよ
それは……いったいどのような……
山郷やまごう武揚ぶよう
お楽しみはとっておくものだよ。
さぁ、今際いまわの別れとなるだろうか……
鈴代すずよ、それに風魔ふうま君!
わたしは残念だよ――
おい、小森こもり
新しいを試す時だ!
準備はおこたりないか?

小森こもり時夫ときお
無沙汰ぶさただな、喪神もがみ風魔ふうま
お前には楽しませてもらったよ!
まだ自分の力を信じるか?
――科学が生んだ人籟じんらいを相手に、
せいぜい威勢いせいを張るが良い!

【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし
なんだか不思議です……
セヒラが乱れていきます――
小森こもり時夫ときお
うははははは~
人籟じんらいはセヒラを取り込んで、
おのれの中で融合ゆうごうする!
お前らの技術は通用しない!

《バトル》

小森こもり時夫ときお
まだ序の口というやつだな。
人籟じんらいの材料は尽きない!
またお手合わせ願うとするぜ!
如月きさらぎ鈴代すずよ
風魔ふうまさん……
叔父おじは何かをつかんだ……
そうなのかも知れません。
人籟じんらい牛頭会ごずかいの肝いりだった、
そういうことなんでしょうか?
私も出来る限り調べてみます。
叔父おじのこと――
私も責任を感じています。
【着信 喪神もがみ梨央りお
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいし――
先ほどは……
――うまく伝えられませんでした。
怪人がを指揮しているのに、
セヒラをちゃんと観測できなくて……
人籟じんらいは波形が乱れやすい――
これを教訓としておきます。
それと……
探信の仕方ですが、
私の方でいろいろ研究してみます。

小森こもりの挑発は山郷やまごうの計略であった。
国立防疫ぼうえき研究所で生み出される人籟じんらい
山郷やまごうらはそれをも利用し始めた――