ゴエティア偽典の謎

〔思念空間〕

式部丞しきべじょう
陰陽五行いんようごぎょうを表す五芒星ごぼうせいに対し、
正三角を逆にかさねた星が六芒星ろくぼうせいです。
いわゆるダビデの星です。
そのダビデの息子がソロモン、
稀代きたい猶太ユダヤ王として知られています。
ソロモンは約束の地とされる、
カナンの地で信仰されていた神々を、
皆、悪魔として追放しました。
それがソロモン七十二柱ですね――
その七十二柱のうち、
最高神とされたのがバール神です。
バール神は朝鮮半島の牛頭山ごずさんで、
牛頭天王ごずてんのうと同体となり日本へ――
今、京都祇園ぎおん社にまつられています。
ソロモン七十二柱について、
その召喚呪文や印章いんしょうしるしたのが、
ゴエティアの書とされているのです。

しかし――
帝都にもたらされるのは偽典ぎてんです。
何者かが書き改めたものなのです。

一体、誰が?
如何様いかような意志をもって――
とある写本に謎がありそうです。

豊原とよはら市街〕

麻美マーメイ
樺太からふとへは船で渡ります。
代表的なのが稚泊ちはく航路です。
稚内わっかない樺太からふと大泊おおとまりを結びます。
稚泊ちはく航路が開かれたのは大正十二年。
関釜かんぷ航路と同じ鉄道連絡航路です。
約九十海里かいり、八時間の船旅です。

別に樺太からふと庁命令航路というのもあり、
大阪から横浜、東京、小樽おたる経由で、
大泊おおとまりに向かう貨客かきゃく航路です。
小樽おたるからは二十時間かかり、
主に物資の輸送に使われています。

大泊おおとまりからは樺太からふと庁鉄道樺太東からふととう線で、およそ一時間の行程となります。
樺太東からふととう線の前身ぜんしんは軍用軽便けいべん鉄道です。この辺りは梨央りおちゃんがくわしそう――
コルサコフ、ウラジミロフスカ間に、
軍需ぐんじゅ輸送目的で敷設ふせつされたのです。
明治三十九年のことです。

そうそう、コルサコフ、
ウラジミロフスカというのは、今の大泊おおとまり豊原とよはらの旧露西亜ロシア名ですね。

【着信 喪神梨央】
豊原とよはらには赤軍せきぐん兵士が潜入しています。
連中は、樺太からふと奪還を企てています。
特別赤旗あかはた極東きょくとう軍と呼ぶそうです。
間宮まみや海峡を挟んだ樺太からふとの対岸、
ソヴィエツカヤ・ガヴァニに、
本拠ほんきょを置く、第四十八軍です。
皆、怪人化している様子です。
注意してください!

《バトル》

〔思念空間〕

【式部丞】
今年三月、波斯ペルシア伊蘭イランへと国名を変え、新聞でも大きくほうじられました。
波斯ペルシアのほうが馴染なじみがありますが。

その波斯ペルシアのダレイオス大王が残した、
ベヒストゥン碑文ひぶんという遺物があり、
そこに大王の半生がしるされています。
アケメネス朝波斯ペルシア時代ですから、
紀元前五百年くらいのものですが、
十世紀、第二の碑文ひぶんが発見されます。
それを書き写したのが、
ベヒストゥン写本なのです。

第一の碑文ひぶんとは違い、
悪魔召喚しょうかんに関する記述で、
くされているのです。

写本にはゴエティアに関する
記述もあります――
ゴエティアを書き改める者こそ、
真の王なり、混沌こんとんの王なり――
そうしるされているのです。

写本自体、碑文ひぶんと同じ
古代波斯ペルシア語で書かれていますが、
そのほとんどが血でしたためられているのです。