過去の帥士

〔思念空間〕

【帆村虹人】
山王さんのう機関では、
機関員の符号ふごう納音なっちんで求める。
僕は一九〇九年十一月六日生まれ、
納音なっちん路傍土ろぼうど、土の属性だ。
土属性の色は金だ。
だから僕の符号は、金ノ七号帥士きんのしちごうすいしだ。

同じ理屈りくつで、風魔ふうま納音なっちん泉中水せんちゅうすい
水属性の色は黒だから、
黒ノ八号帥士くろのはちごうすいしとしている。
風魔ふうま納音なっちん泉中水せんちゅうすい陰徳いんとくの性格だ。
人知れず徳を積み、世の役に立つ――
温厚篤実おんこうとくじつで直感力が抜群ばつぐん
言い得てみょうだな――

僕の場合、責任感が強く真面目まじめ
だが融通ゆうずうかず頑固一徹がんこいってつとある。
泉中水せんちゅうすい風魔ふうまとの相性は、
価値観が違うため、たがいを尊重する、
それが発展の秘訣ひけつとある――

確かにそうだな――
あいつと僕とはおおいに違う。

それにしても――
帆村ほむら流をひらいた兄上が白ノ六号帥士しろのろくごうすいし
それ以前にもいたのか、帥士すいしが……
この話、兄上にしても、
よくわからないらしい――
数からすると五人いたことになるが。
過去の機関帥士すいしはどうなったんだ?

豊原とよはら市街〕

麻美マーメイ
明治四十一年、樺太からふと庁が
大泊おおとまりから豊原とよはら町に移転いてんしました。
豊原とよはら名実めいじつともに、
樺太からふとの中心地として、
さかえる基盤きばんができたのです。
以来、市街しがいの整備が進んで、
現在のような整然せいぜんとした街並みが、
誕生したのです。

札幌さっぽろをお手本として、
南北に走る通りには、
東一条ひがしいちじょう西一条にしいちじょうと名付けて、
東西の通りは北一丁目のようになり、
樺太旅荘からふとりょそうなら東三条南ひがしさんじょうみなみ四丁目という、住所表記になります。

豊原とよはら駅から東へ、旭ヶ丘あさひがおかつ、
樺太からふと神社までびる通りは、
神社通りとしょうされています。
洋風建築の商店がのきつらね、
電気ランプの街灯がいとうが並び、
七竈ななかまど並木なみきが秋に色をえます。

北の町外れには旧市街きゅうしがいが残ります。
その大字追分おおあざおいわけの周辺は、
露西亜ロシア流刑人るけいにん開墾かいこんした地域です。

【着信 喪神梨央】
豊原とよはらには赤軍せきぐん兵士が潜入しています。
連中は、樺太からふと奪還を企てています。
特別赤旗あかはた極東きょくとう軍と呼ぶそうです。
間宮まみや海峡を挟んだ樺太からふとの対岸、
ソヴィエツカヤ・ガヴァニに、
本拠ほんきょを置く、第四十八軍です。
皆、怪人化している様子です。
注意してください!

《バトル》

〔思念空間〕

【帆村虹人】
山王さんのう機関の設立は一昨々年さきおととしだ。
兄上と僕はその時から加わる――
それ以前に帥士すいしがいたとなると……
山王さんのう機関じゃない所で活動していた、
そういうことになるな――

独逸ドイツのユンカー博士が、
帝都のセヒラを同定したのが、
その同じ年の一月――
博士の発見から山王さんのう機関設立まで、
二ヶ月少々か……
いくらなんでも早すぎるな。

兄上はこの話をあまりしたがらない。
今度、参謀さんぼう本部に出向いたら、
記録を当たって見るとするか。

僕は時々不安になる――
自分たちは予定されていた存在、
計画されていた存在なのではと――
今、こうして考えていることも、
すべて計画の中にふくまれている、
そんな気がしてくるんだ――